第1話 異世界召喚はいつも突然だ

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渋々と席を立つと、委員長の後ろから莉菜がひょっこり顔を出した。 「景君、私が行ってこようか?」 「……いや、大丈夫。行ってくるよ」 委員長の鬼気迫る顔(莉菜に行かせる?ふざけんなよ?お前が逝け!)を見て、莉菜に任せるという選択肢を潰された景は、委員長からお金の入った封筒を受け取った。 突っぱねるという選択肢もあったが、そうするともっと面倒なことになる予感しかしないので、早く帰ってゲームをするには、これが最善と判断したのだ。 「余計なもの買っちゃダメだからね」 「…わかってるよ」 僕は小学生か? という一言を飲み込み、景は封筒をポケットに入れた。 丁度そこへ、何故かスーツに着替えた担任の郁美が入ってきた。 「みんなお疲れ! ドーナツ買ってきたわよ!」 「おぉ、さすが郁美ちゃん! 気が効く!」 お調子者の五味周太が囃し立てると、郁美からデコピンを食らっていた。 「景君! ドーナツだって」 教室から出かけていた景だったが、莉菜に呼ばれ、踵を返した。その時、 「っ! 何だ、この光!」 教室全体を覆うように、突如、光の模様が出現した。 「みんなッ! 教室から出ーー」 先生のその言葉の残滓を残し、景の視界は暗転した。 そしてこの日、藤岡高校1年4組の生徒は誰一人帰宅することはなかった。
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