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「おぉっ……遂に、遂に成功したぞ!」
景が次に目を開けると、そこは暗い地下室のような閉鎖空間だった。
蝋燭のような灯りが薄暗く辺りを照らし、中世ヨーロッパを感じさせる石造りの壁が四方を覆っている。地下室と表現したのは、窓がなく、肌を撫でる空気が冷たかったからだ。
景たちの眼の前では、初老の男性ーー王冠を被り、偉そうな髭を生やしているーーが狂喜乱舞状態で騒いでいる。彼の周りにいるローブを着た人間たちも、疲労の色が見えるが嬉しそうだ。王冠の男性の隣には、息を切らした少女が座り込んでいる。
「なぁ、おい。ここってどこだよ?」
「私たち、さっきまで教室にいたよね……?」
「そうそう! それで急に足元が光って!」
クラスメイトたちが、次々に騒ぎ出し、声をあげ始めた。
それもそのはずだ。どう考えても、この状況は普通じゃない。瞬きする間に、景色が変わるなんて、有り得ないのだから。
「みんな! 静かに! 落ち着きなさいっ!!」
郁美が声を張り上げる。弦のようなピンと張りつめた声で、騒いでいた生徒が静かになる。
こういうところは、さすが先生だ。
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