第1話 異世界召喚はいつも突然だ

6/11
前へ
/301ページ
次へ
すると、先ほどまでお祭り騒ぎだった初老の男性が、景たちの方を向いた。 「いや、すみませんな。年甲斐もなく興奮してしまいまして。……ようこそ、御出でなさいました、異界の勇者方よ。儂はリヒト王国国王アルシュバン・エール・ブ・ラント・リヒトですじゃ」 やはりか。王冠を被っている時点でそうじゃないかとは睨んでいた景は、特に驚きはしなかった。 しかし、郁美や他の生徒は国王という単語に少したじろいでいた。 それにしても、『異界』とアルシュバンは言った。それはつまりーー。 「ちょっと待ってください。異界って、それにリヒト王国なんて国、聞いたことーー」 「ふむ。あなた方が混乱するのも無理はないでしょうな。しかし、説明するにしても、場所を変えましょう。ここでは座って話せませんからな」 アルシュバンと少女は、大勢のローブを着た兵たちに、休むように言うと、景たちを先導するように、歩き出した。 景は、集団の一番後ろを歩きながら建物内の様子を見ていた。すると、横から、 「ねぇ、景君。どう思う?」 「……何だ、白石か。どう思うって何が?」 「さっきの国王様? の話。本当なのかな?」     
/301ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5851人が本棚に入れています
本棚に追加