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アルシュバンは、隣りの少女に目配せした。
そこまで聞き終わると、一騎が質問を始めた。
「アルシュバン国王陛下、でいいですか? 一つ、お願いします。まず、ここは本当に異世界なんですか?」
「ふむ、まだ信じていただけませんか。仕方ないですな」
ぶつぶつと、小さく呟いたアルシュバンの手に突然小さな火の玉が出現し、無人の壁向かって放たれた。
景も含めクラスメイトたちや担任の郁美も、目を見開き、同時に眼の前で起きたことに戦慄した。
人が掌から火の玉を出すなんて、アニメや漫画の世界の話でしか見たことがなかったからだ。同時に、これを自分たちに向けて撃たれたらと考えると、ゾッとした。
そんな考えを表情から読み取ったのか、アルシュバンは苦笑いをした。
「ご安心くだされ。皆さん方は異界からきた者故、我々などよりも強力な力を誰もが有しておるはずじゃ」
「そんなことより、ここが異世界だと言うなら、私はこの子たちを元の世界に送り届けなければなりません! 元の世界には、戻れるんですよね?」
郁美が少しキツイ口調でアルシュバンに問うた。
その毅然とした先生の態度に、クラスメイトの誰もが感心した。
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