逢瀬

2/25
146人が本棚に入れています
本棚に追加
/66ページ
「お疲れ様でした」 挨拶を交わして店を出た。カラッと晴れた空を見上げながら、うんっと背伸びをする。ボキボキと体から軽快な音が鳴り響いて、凝り固まった体が少し楽になる。 「よし」 気合いを入れた日和の背後から「何がよしなんですか?」と声が掛かった。 日和はビクと肩を揺らし振り返る。そこには日和の小さな呟きを聞きとめた堀田が、苦笑しながら立っていた。 「・・・今日も平穏無事に一日が終わったから」 「ああ・・・時間的に言えば、普通は始まったって言うんですけどね。夜中に仕事をしてると、何だか感覚がおかしくなっちゃいますね」 「堀田は今から大学か?」 「・・・夏休みです。今の発言で橘さんがどれだけ俺に興味がないのかが分かりました。かなり傷付いたんですけど?俺、こんなに友好的かつ、好意的に接してるのに、あんまりですよね」 恨みがましい目に見据えられ、日和は咄嗟に顔を俯けた。 「いや・・・そんなことは・・・」 ゴニョゴニョと曖昧に語尾を誤魔化す。 「だって、興味ないからしょうがないよね?」 突然、ふわりと背後から抱き締められた。日和が頭を上げようとしたら、頭の上に風太の顎が突き刺さる。 「ーー俺、橘さんの彼氏さんに嫌われるようなこと何かしたっけ?」 「ううん、今のところはギリギリ大丈夫・・・かな」 「微妙な・・・変に勘繰って敵視するのは止めて欲しい」 「だって堀田さん、ひよさん好きでしょ?ひよさんも懐いてるし。ヤキモチ妬くのは仕方ないよね」 「首傾げて可愛らしく言われても、トキメいたりしないから」 「・・・小原、重い」 日和はプルプルと頭を振って、風太の顎を振い落とした。
/66ページ

最初のコメントを投稿しよう!