149人が本棚に入れています
本棚に追加
バタバタバタと音がしたと思ったら、ポンと優しい温もりが頭の上に置かれた。
「ひよさん、気分が悪いの?」
少しだけ焦ったような声が、思いの外近くに聞こえて日和は顔を上げた。目の前に、同じようにしゃがみ込み、日和を心配そうに見つめる風太の顔があった。
「・・・小原」
「うん。さっさと先に行っちゃってごめんね。具合悪いのに、無理させちゃったね」
日和はブルブルと頭を振った。
「違う、そうじゃないんだ」
そっと風太に向かい手を伸ばす。少しだけ震えるのは、振り払われるのが怖いから。臆病な心が勝手に落ち込んで不安に苛まれているから。
日和は、男にしたら細くて長い指に触れた。指先でそっと触れても振り払われないことに安堵する。
「僕は、小原が好きだ。・・・本当は手を繋ぎたい。抱き締めて貰ったり、キスしたり、色んなことを一杯したい。でも、どうしたらいいのか、分からないんだ。小原が好き過ぎて、おかしくなりそうなんだ」
「俺はもう、おかしくなってるよ」
「どうして僕なんだよ」
ずっとずっと疑問だった。風太なら選び放題のはずなのに、何故と。
「じゃあ、反対に聞くけど、どうしてひよさんは俺なの?」
疑問を疑問で返されて、日和は俯いた。
「・・・・・・優しかったから」
「うん」
「だから・・・」
「それだけ?でも、優しくしてくれる人なら他にも居たんじゃないの?ーー堀田さんとか」
「堀田は・・・」
「堀田は?」
「違う」
堀田も確かに優しかった。見た目と違い面倒見も良くて、日和を厭うことなく接していた。だからと言って、堀田を好きになったかと問われれば、答えはノーだ。例えばもし、好きだと告白されても断っていただろう。
最初のコメントを投稿しよう!