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「ぼ、僕は小原が今まで付き合って来た彼女達に嫉妬してるんだ。その手で、彼女達に触れていたんだと思うだけで、胸の奥がもやもやするんだ。ま、街を歩いていると、みんなが小原を振り返る。僕を見て顔を顰める・・・それを見る度に、嫌な気持ちになる」
「過去のことは、俺にもどうすることも出来ない」
「・・・分かってる」
「でも、これだけは知っておいて欲しいんだけど」
風太はそう前置きすると、ニコリと微笑んだ。
「こんなに誰かに執着したのも、好きだと思ったのも、ひよさんが初めてなんだ。キスも抱擁も、それ以外のことも、欲しいって気持ちが抑えきれないくらいに昂ぶったのは、ひよさんが初めて」
「・・・・」
風太の言った言葉が信じられなくて、日和は首を振った。
「・・・か、過去のことだって、分かってはいる。だから、そんなフォローは必要はない」
心に折り合いを付けられないだけで、する必要のない嫉妬だということは分かっているのだ。
「本心なんだけどな」
風太は苦笑を浮かべた。
「まあ、いいや。嫉妬されるのは好かれている証拠みたいなものだしね。そうやって、溜め込まないでぶつけてくれるのならいいかな」
「う、鬱陶しくないのか?」
「そんなこと言ったら、堀田さんや、お客さんにまでヤキモチを妬く俺なんて、立つ瀬がないでしょ」
「お客さん・・・?」
「そうだよ。言ったでしょ?俺以外の奴と話しするのも、目にするのも腹が立つって」
聞いたのは仕事終わり。イラつく堀田に風太は本気とも冗談とも付かない口調で言っていた。
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