大翔の混乱

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(何がどうしてこうなった) 九条大翔は二日酔いと寝起きでぼんやりした頭を必死になって働かせる。 見慣れぬ天井に見慣れぬ部屋。簡素な作りのここが、ビジネスホテルの一室だとは容易に想像が付いた。 昨夜は、失恋した幼馴染を慰めるため、夜の街へと繰り出した。最初に行ったレストランでは、ソフトドリンクを注文した。何人かの女に声を掛けられたが、乗り気じゃない奏をおんばかって全て断った。 溜まり場の地下にあるBARに赴き、いつまで経っても浮上しない奏に「まぁ、飲め」と、ムリムリ飲ませて、二人でボトルを空けたまでは覚えている。 問題は、そのあとだ。 大翔は視線だけを動かし、背中を向けて眠る相手を凝視した。丸みのない骨張った骨格。細身だが筋肉の付いた二の腕。透けるような真っ白い肌に、点々と赤い華が咲くさまは、妙に煽情的でドキリとする。 それでもーーーー。 「あり得ねえって」 クラクラする頭を振り、そっと身を乗り上げ顔を覗き込んだ。いつも冷気を帯びたような切れ長の目が、今は閉じられている。薄く開いた唇が微かに寝息を立てていた。 起き上がった拍子にシーツが捲れた。全裸の自分と全裸の相手。妙にスッキリしている下半身に、床に脱ぎ捨てられた二人分の洋服。その上に無造作に投げられたティッシュらしき物と、真四角の形をした袋のゴミ。もちろん、その袋には見覚えがある。あり過ぎるほどに。 大翔がいつも持ち歩いている『薄さ0.01ミリ』と謳われているコンドームだ。 ツインの部屋に設置されているもう一つのベットの上は、皺くちゃになったシーツが、昨夜の激しさを物語っていた。
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