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顎は外れたが、拘束は緩まない。
「好意の意味が違う」
「それは知ってる」
「小原、離せ」
日和が逃れようと身動ぐ度、拘束が強くなっていく。
「じゃあ、そのヤキモチは妬く必要のないものだって分かるよね?」
「んーー難しいよね」
「何が」
珍しく苛立った声を出す堀田に、日和はビクリと肩を揺らした。そんな日和を宥めるように、風太は首筋に顔を埋めキスを落とす。
「ちょっと、小原!」
焦る日和を尻目に「だって俺、ひよさんが俺以外の奴と話をするのも、目にするのも腹が立つんだもん」とのたまわる。
ピシッとその場の空気が固まったような気がした。可愛いらしく『だもん』なんて言いながらトンデモナイことを口にする風太を、日和は顔を引きつらせながら振り仰いだ。
とびきり蕩けた笑顔を返されて、思わず見惚れてしまう。
目の前には堀田が居る。ここはバイト先の駐車場だ。頭の片隅では、正気に戻れと小さく赤いランプが点滅する。
でも、恋心は理性を簡単に崩壊させる。こうやって傍に居るだけで『好きだ』と叫び出しそうなくらいの気持ちが溢れてしまうのだから、もうどうしようもないじゃないかと、点滅するランプを蹴飛ばした。
惚けた顔で見つめる日和に、風太は柔らかな唇を押し当てる。上唇を軽く食まれて、チュッと音を立てて唇が離された。その小っ恥ずかしくなる音に、日和は我に返る。
途端にジタバタと暴れ出す。
「お、おまっ、お前は、何を考えてんだ!」
「ひよさんのこと」
「なっ・・・」
「今、ひよさん何してるかな。ご飯ちゃんと食べてるかな。誰かに言い寄られたりしてないかな。早く会いたいなぁって、そればかり考えてる」
日和は口を『は』の形に開いたまま、風太を見上げた。
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