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「ねぇ、ひよさん」
「うるさい」
「手、繋ごうよ。せっかく二人でいるのに離れて歩くの寂しいよ」
「ダメだ」
日和は少し離れて歩く風太を振り返り「半径1メートル以内に近づいたら承知しないからな」と、目を吊り上げた。
「そんなに怒らなくてもいいのに」
シュンと項垂れる風太に胸は痛むが、ここで絆される訳にはいかないと、自分に言い聞かせた。
堀田はいつの間にか居なくなっていた。風太の話によれば、キスをする少し前に帰ってしまったようだ。
明日の夜には顔を合わせなきゃいけないのに、どんな顔をすればいいのか、考えるだけで憂鬱になる。
「俺、今日会えるの楽しみにしてたんだよ?」
それは日和だって同じだ。風太の補修も昨日でやっと終わった。今日は日和もバイトが休みだから、抱いて貰えるかもしれないと、ずっとそわそわしていたのだから。
あの日以来、キスや抱擁は会う度にする。家の中で二人切りで過ごす時など、日和は風太椅子に座り抱き人形のようになっていたりもする。
でも、それ以上の行為には及んでいない。風太は日和のことばかりを考えていると言っていたが、日和だって風太のことばかり考えていた。
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