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「ひよさん何食べたい?」
いつものスーパーで、風太はカゴを手に日和を振り返る。
「ほうれん草食べたい」
「うん。それと?」
「・・・・・・カレー」
「カレー好きなの?」
日和はコクリと頷くが、本当は特に好きだという訳ではない。日和の中で、カレーは晩ご飯のイメージがあったから、そう言えば夜まで、もしかしたら泊まって行くかもしれないと思ったからカレーとリクエストした。
素直に泊まって欲しいと言えればいいのかもしれないが、さすがにまだハードルが高かった。
「カレーかぁ・・・」
日和の思惑を知らない風太が難色を示す。
「む、無理ならいい」
「無理じゃないけど、カレーは煮込んだ方が美味しいからさ。でもその間、鍋の傍から離れられないでしょ?ひよさんにくっ付いていられなくなるのが、嫌だなって思ったんだ」
「うっ・・・」
風太はいつも、日和が難しくて足踏みしてしまうハードルを難なくクリアしてしまう。
さらりと告げられる言葉に顔を赤くして、絶句すれば「ひよさん、可愛い」と、耳元で囁かれた。
ここで反論すれば、また可愛いと言われるのが分かっていたから、日和は顔を手で隠しながらムッと睨むだけに留めた。
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