逢瀬

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風太はカッコイイ。身長だって高いし、痩せて見えるが、脱いだら引き締まったいい体をしている。 色素の薄い目や髪はそれだけでも人目を引き、通り掛かった女性は必ず二度見する。 綺麗という訳じゃない。顔だけで言うなら、奏や圭太の方が整っているし、美人だろう。でも、風太には容姿がどうとかじゃなく、どこか人を惹きつけて止まない、そんな雰囲気のある男だった。 だからこそ、自分が周りにどう思われているか気になった。自分が笑われるだけならいい。でも、傍に居るせいで、風太が笑われたりするのは耐えられなかった。 日和は手を振り払おうと腕を捻った。 「俺と手を繋いで歩くのはイヤ?人目がそんなに気に掛かる?」 「手を繋ぐのが、イヤな訳じゃない。人目を気にするのは当然だろう」 「俺は気にしない」 「僕は気にするんだ」 「それは、俺が年下だから?」 剣のある目で見つめられ、日和はビクリと体を揺らした。以前、ひどく怒らせたことを思い出し、日和は目を逸らし俯いた。 「・・・そうじゃない」 「じゃあ、なに」 「・・・・・・小原がカッコイイから」 「・・・は?」 日和は顔を上げて拳を握り締める。 「こ、小原は気にしてないかもしれないが、女が皆んな小原を見るんだ!そんなカッコ良くて、モテる男と一緒に居る僕に、みんなが『何であんな男が』って睨み付けてくる。ぼ、僕がこんなだから、だからーーーー」 あんなヘンテコな男、似合わない。そう言って嘲笑されている気がした。密閉された空間は逃げ場がなくて、ずっとその目が追いかけて来るようで、怖かった。 「待って、ひよさん。落ち着いて」 「僕は、僕は落ち着いている」 「うん、分かったから。ーーーーこっち来て」 風太はそう言うと、日和の手を引きレジを超え飲食スペースまで連れて来た。 店内で購入した物を、食べれるようにと設けられた場所で椅子を指し示した。 「買い物を急いで終わらせてくるから、ここで座って待ってて」 俯いたままの日和に向かい「俺が戻って来るまで、絶対に動いちゃダメだよ」そう言い置いて店内に戻って行った。
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