逢瀬

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日和は、ハァーと溜め息を吐き出して椅子に座った。テーブルに肘を付き頭を抱えた。 呆れただろうか。日和は怖くて、最後まで風太の顔を見ることが出来なかった。 嫌われたまではいかないだろうが、引かれたかもしれない。口に出すつもりはなかったは、言い訳だろうか。 風太はカッコイイ。惚れた欲目を抜きにしても、誰だって風太に惹かれずにはいられないはずだ。 いつも振られてばかりだと言っていたが、それだって怪しいものだ。付き合い出してから、そんなに日が経ってはいないが、風太は本当に大切にしてくれていた。 メールや電話はマメだし、少しでも時間があれば一緒に居ようとしてくれる。言葉は惜しみなく伝え、態度にも表す。そんな風太を振るだなんて、風太を知れば知るほど、信じられなかった。 そこまで考えて、風太の歴代の彼女達のことが気になり始めた。いや、正直に言うなら、気にはなっていた。 きっと綺麗で可愛い子達に決まっている。 そして・・・ずっと聞けずにいたが、奏と抱き合っていたことも胸の奥にしこりとなって残っている。風太からも何の説明もない。 日和は今更問い質すことも出来ないままでいた。
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