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そんな彼だからこそ……自分の抱えていた任務のことまで話してしまえたのかもしれない。ジークも居ない今、全て一人で立ち回ろうとするには限界も覚えてきており、ちょうど補佐してくれる人間が欲しいと思っていたところだった。
しかし、それ以上に。
絶対の味方でいてくれるという彼の言葉に、ただ甘えてしまいたくなったのかもしれない。一人で秘密を抱えていることに疲れ過ぎて。
――もうこの時には既に、私も彼を信頼していたのかもしれないな……。
知らず知らずの間に、彼が側に居てくれることに安心を感じられるようになっていた。
自分に向けられる彼の笑顔に、安らぎだけでなく、ときめきも覚えていた。
自分を心配してくれる彼の優しさが感じられるたび、どこまでも嬉しくて仕方なかった。
似ても似つかぬ姿なのに……そこに亡き陛下の面影が重なっていた。
私を傷付けることなく、どこまでも広く深い愛情をもって、あたたかく包み込んでくれるような―――。
その信頼が、いつしか恋情へと変わってゆくのにも、そう時間はかからなかった。
亡き陛下へ感じた想いとは、同じようでいて、また違う感情。
トゥーリは、尊敬すべき主でもなく、また敬愛すべき父親でもなかった、そのためだろうか。
ただ、彼の向けてくる想いに応えたいという気持ちだけが、そこに在った。
彼の望むままに、触れられてもいい――抱かれてもいい。
いや、違う。私から彼に触れたいのだ。――抱かれたいと願っているのだ。
日々の生活の中、ちょっとしたことで彼と触れ合うたびに、その想いが募り、身体が熱くなった。
彼の一挙手一投足に一喜一憂しては、落ち付かない気分で一人の夜を過ごした。
――自分がこんなふうになってしまうなんて、知らなかった。
トゥーリのことを考えて収まりのつかなくなってしまった自身の昂りを、無理やり慰めた翌朝、寝室を整えにきたコルトに即バレて、ものすごく恥ずかしい気分を味わったりもした。
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