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「私の存在が陛下の名誉を貶めてしまうのであれば、いっそもう、死んだ方がいい……頼むから、誰か殺してくれ……」
「――もういい、レイン」
いつの間に傍に来ていたのだろう、すぐ近くからそう言ったアレクが、しゃがみこんでいた私の肩を抱いていた。
「もう何も言うな。――おまえの気持ちは、よくわかったから」
「アレク……」
「おまえの気持ちを尊重しよう。俺は、もう何もしない。だから安心して、泣きたいなら泣け」
その言葉を聞きながら、突然なにかが喉元までせり上がってきて、堪え切れず私はアレクの首にしがみついた。
と同時に、自分の口から、呻きとも叫びともつかないものが洩れてくる。
もう、自分では止められなかった。
そのままアレクの肩に顔を押し付けて、堰を切ったように泣いていた。
心の奥底から湧き上がってくる、生まれて初めて感じる恋情を、泣く以外にどうすれば鎮められるのか、この時の私にはわからなかった。
――そして翌朝。
通常通りに動き始めようとしていた王宮に、国王陛下の訃報がもたらされた―――。
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