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アレクに泣き付いた私は、そのまま仮眠室に泊まることとなった。
『おまえが王宮にいれば、俺もこのまま傍に付いていられるから』と、アレクから言ってくれたからだ。
一晩中、私の傍に付いて、夜中になって私が苦しんだりしないか、身体の具合に何か変化が起きないか、見張っていてくれると申し出てくれたのだ。
私に何かあれば、すかさず陛下のもとへと駆け付けるよう、約束もしてくれた。
泣き疲れた私を仮眠室の寝台に押し込んで、当然シャルハは王宮内に在る迎賓館まで送り届け、その足で近衛詰所に寄ると夜通し警護の任に就く旨を報告し、そういった全ての雑用を終えてからアレクは、私のもとへと戻ってきてくれた。
アレクに甘えて眠りに付いた私は、そして翌朝、すっきりと目覚めた。
枕元にいてくれたアレクに何もなかったことを確認し、悪い予感が杞憂に終わってくれたことを安堵した。
そして、また普段の日常に戻るべく、私は身支度を整え、アレクは私のために朝食を用意しにいってくれて……そのすぐ後のことだった。
血相を変えたアレクが戻ってきて、部屋に駆け込んでくるなり、それを告げたのだ。
『陛下が亡くなられた』、と―――。
昨日までの慶賀の雰囲気が一転した。
悲報を受けて、王宮だけでなく、王都中――いや、もはや国中が喪に服し、国民すべてが、愛すべき名君の早すぎる死を悼み、涙した。
それほどまでに陛下は、国民から慕われていらっしゃった。
王家の墓所まで陛下の遺骸をお送りする葬送行列、それを見送るべく、沿道は民により埋め尽くされた。
至るところから、進む棺に白い花が投げられる。民の手による手向けの香華だ。
行列の通った後には、まるで絨毯を敷き詰めたが如く、道が白い花で埋め尽くされんばかりだった。
ああ、この偉大な王は、これほどまでに民に愛されていたのか、と……改めて、喪ったものの大きさに、誰もが気付かされた。
――ああ、陛下……あなたはまだ死ぬべき人ではなかったのに。
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