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「――あの御方は……どうあっても、私を放っておいてくれる気など無さそうだな……」
自嘲気味に呟くと、私はアレクに答えを返した。――諾と。
王宮から使者が送られてくるたび何だかんだと理由をつけては会わずに追い返していたら、とうとうアレクまで引っ張り出されてきた。
ジークの言い訳すら見抜いてしまうアレクには、居留守なぞ通用してくれない。
そこまでして私を引きずり出そうとするなら、仕方ない、乗ってやろうじゃないか。
「私は、腹を決めたぞアレク」
言った私の内側に、ゆうらりとした昏い炎が揺らめいたのがわかった。
熾のように燻っていたものが、いま炎を上げて再燃し始めた。
「雉も鳴かずば撃たれまいに―――」
それを呟く自分の唇が、確かに微笑んでいたことを。
誰に言われずとも、他でもない自分自身が、はっきりとそれを理解していた。
そして私は、初めて書簡を付けた伝書鳩を飛ばすこととなった。――シャルハへと宛てて。
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