【2】

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       王宮の御典医により、前陛下の死因は心臓発作ではないかとの見解が伝えられた。  部屋の状況等にも不審な点は無く、暗殺などによるものではない、あくまでも自然死と断定された。  しかし、私は確信していた。  王太子が私だけに告げた、あの言葉で。  そして、去りながらに見せつけた、口角の上がった口許、そこに溢れた残虐な悦楽に満ち満ちた横顔で。  ――この男が、陛下を殺した……!  やはり、あの誕生祝いに贈られた酒に毒が入っていたのだ。  きっと私は、直前に襲われた際、眠り薬と共に毒の中和薬でも一緒に飲まされていたのだろう。  ああやって襲わせ薬を飲ませたことで、私に毒殺を示唆し、毒見をさせ、何も無いことを確認させたうえで、確実に陛下に毒入りの酒を飲ませるように仕向けたのだろう。  死因なぞ、御典医を抱き込んでおけば、どうとでも捏造できる。  自然死という見解が下されれば、誰も残った酒など調べない。念を入れるならば、部屋付きの下っ端の一人でも抱き込んで後始末をさせておけばいいことだ。  だから、誰も他殺を疑わない。王太子を疑わない。  気付いているのは私だけ―――。 「――いいえ、陛下」  そして私は嘘を吐く。こちらを見据える視線を、正面から真っ直ぐに受け止めて。 「前陛下の死には、御典医が自然死という判断を下しています。そうである以上、陛下が殺したなどということは、ありえません」  言って、唐突に私は膝を折った。  跪き、新王へと礼を取る。 「申し訳ありません。最初は、畏れ多くも陛下の下されたお言葉で、それを疑ってしまいました。しかし今では、そんな己を恥じております」  落とした頭を、ゆっくりと持ち上げる。 「陛下は……ああ仰ることで、わたくしの忠誠を、お試しになられたのですね……?」  告げた途端、こちらを見下ろすその表情に、満足げな色が広がる。  その笑みには、まさに獲物を手中にした喜びが、感じられた。  ――どうやら私の読みも、間違ってはいなかったらしい。
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