【2】

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「少しでも陛下を疑ってしまったわたくしを、どうかお許しください」  縋るような視線で、言い募る。 「わたくしの忠誠は陛下のために。――わたくしを愛してくださる陛下のためだけに、捧げたく存じます」 「ああ、本当に……君は賢いね、レイノルド」  わざわざ跪くと、言いながら新王陛下が私の髪を撫でる。 「やはり私の願いを叶えてくれるのは、君でしかありえない」  おもむろに口付けられる。  ひとしきり口内を嬲られるのを、適当に応えながら、ただ私は黙って堪えた。  背後から見ているだけのアレクも、きっと腹立たしい想いを堪えてくれていることだろう。それでも何も言わないのは、予め私から言い含めていたからだ。『何があっても絶対に、口も手も挟むなよ』と。  そもそも、この場でアレクを自分の側にと望んだのは、また身体を求められるのを避けたかったからだ。  私は、もうこの男に自分の身体を開いてやるつもりなぞ無かった。  たとえ強硬手段に及ばれるようなことがあっても、アレクが近くに居てくれさえしたら、彼が助けてくれる。  さぞかし新王陛下からしてみたら面白くなかったに違いない。ようやく、私を好きに甚振れる絶好の機会が巡ってきた、というところだったろうに。  更に、私がこの場に同席させるほど彼においた全幅の信頼も、陛下の意に染まぬところであったようだ。  だから、この口付けも、アレクに対する一種の意趣返しのようなもの、でもあったらしい。  後になってから、呆れたようにアレクが教えてくれた。――ああしながら『ずっとこちらに見せつけていた』、と。  ――本当に、やることが、どこまでも器の小さいことだ。  身体ごと差し出さなくて済むのなら、たかが口付けくらい、幾らでも我慢してやろう。  そう考えて甘んじて口付けを受ける私の姿は、この男の目には、一体どのように映っているのだろう。  どう思われようが一向に構わないが、それでも与し易しと考えてくれたなら、これ幸いというもの。 「――陛下」  唇の離れた隙に、私は無理矢理その言葉を差し挟んだ。
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