159人が本棚に入れています
本棚に追加
それほどまでに絶対的に、聞いたからには確実に叶えて貰わなければならない望み。
そのリスクを、そして覚悟を、彼にも背負って貰わなければならない。
「――レイ……君は一体、何を企んでいるんだ……?」
鬼気迫るかの如き私の真剣な表情に、ようやく徒事ではないと覚ってくれたらしい、少しだけ眉根を寄せてシャルハが訊いた。
「そうまでして叶えたい君の望みとやらは、一体、何だ……?」
「私の望み、それは―――」
まるで内緒話を語るかのように、シャルハの耳元で、それを囁く。
途端、弾かれたように彼は私を振り返った。
「本気か……?」
「ああ、いたって本気だ。それ以上の望みなど、他に無い」
どことなく呆然としたように私を見つめたまま、シャルハが黙り込んだ。
私を見ているようで、実はどこも見ていないだろうことがわかる。そうしながら、頭の中で考えているに違いない。――私の申し出を飲むか否か、どちらに己の利があるか。
彼を見つめたまま、私も黙って返答を待つ。
しかし、一向に聞こえてこないそれに、痺れを切らして思わず、ふっと軽く笑みが洩れた。
「――馬鹿なことを言っていると、自分でもわかってるんだ……」
視線を伏せて呟く。
「こんな汚れた私ごときの身体では、到底釣り合わない大それた望みだということも、わかってる……」
ただ、それでもシャルハに縋るしかなかったのだ。
彼を利用することこそが最も早道である、――と。
「おまえが諾と言わなければ、私の望みなど、ここで潰えるだけのもの。――いいんだぞシャルハ、断っても。今ならば、まだ引き返せる」
「…………」
「そうか……愚問だったな、そんなこと」
迷いが生まれた時点で、もう答えなどわかりきっていたことだ。
私に、それだけの価値など無い。
彼にとって――彼が受け継ぐべきユリサナ帝国にとって。
最初から、わかりきっていたことだ。
「見苦しい真似をして、すまなかった」
言って、そのまま身体の向きを変えて、寝台から降りようとした。
その身体を、ふいにシャルハが引き倒した。
「え……?」
最初のコメントを投稿しよう!