【3】

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「なんだ、それは……?」 「トゥーリ様から預かっていたものです」  ――どくん、と心臓が悲鳴をあげた。  箱を受け取る手が微かに震えているのが、自分でもわかる。 「それをあなたに、と、わたくしに託けてからお帰りになられました。あなたにかなり無理をさせてしまった、と深く反省していらっしゃるご様子でしたよ。『しばらく起き上がれないだろうから充分に休ませてあげて下さい』と、わたくしに頭まで下げられまして、『謝っても許されることではないけれど、せめてもの気持ち』だと、それを残していかれました」 「そうか……」 「では、もうほとんど大丈夫そうですし、このままコルトも下がらせますよ。何かあればお呼びください」 「わかった」  そして、ずっと枕元に立っていたコルトにも「ありがとう」と告げて、頭を撫でる。 「私はもう大丈夫だから、おまえもゆっくり休みなさい。ずっと付いていてくれて、本当にありがとう」  その言葉に薄く頬を染めたコルトは、にっこり笑って一つ頷き、ジークに手を引かれて二人で部屋を後にした。  一人残された私は、手渡されたその箱を、ゆっくりと開く。  蓋を開けたら、まず折り畳まれた小さな紙が、その中身を覆うように乗せられていた。  それを摘まみ上げるや目に飛び込んできたそれに、驚いて私は箱ごと手から取り落としそうになってしまった。  慌てて紙の折り目を開く。  そこにトゥーリ独特の癖字で書かれていた文字は、いたって簡潔なまでの文章だった。 『俺の心は、常にあなたの側に』  箱の中で光るもの――それは、白銀に輝く一つの徽章。  騎士となったものが、その栄誉と共に初めて授かる、いわば騎士である証だ。  階級章等とは違って必ず身に帯びなければならない身分証ではなく、その栄誉に与った己こそを証明する、いわば勲章にも等しいもの。  これこそ、騎士である者にとっての命。  仕える主君と並び命を賭して大事に護らなければならない誇り、そのもの。  ――そんな大切なものを、私に……?
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