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「馬鹿じゃないのか、トゥーリ……!」
呟いたと同時、思わず涙が溢れ出た。
「なんで私なんかに、こんな……」
――これが、『せめてもの気持ち』だと……?
ジークの告げた彼の言葉が、耳に甦る。
「たかが『せめて』くらいのことで、騎士の命ごと投げ出すな馬鹿……!」
悪態を吐きながら、それでも、こんなにまでも私を想ってくれる彼の気持ちが、嬉しくて仕方なかった。
溢れる涙が止まらない――止められない。
『一緒に居られない代わりに、これだけでも側に置いておいて』と……そんな軽い言葉と笑顔が、目に浮かんでくるようだ。
「本当に、おまえは馬鹿だなトゥーリ……」
こんなことまでされたら、もう私は逃げられないじゃないか。自分から身を引くことも出来なくなるじゃないか。
あんなふうに、しなくてもいい想いまで、おまえに与えてしまったのに。
殺されてもいいとまで願ってしまったくらいに、おまえと共に居られなくなることさえ、覚悟したのに。
――おまえを私に縛り付けてしまうことしか、もう考えられなくなるじゃないか……!
トゥーリの“命”が、この手の中にある。――それだけで、自然と私の心は決まってしまう。
もう私は、何があろうと、どんな無様な姿を曝してしまおうとも、自分からトゥーリの手を放さないだろう。
この命ある限り、永遠に。
私から逃げることなど、許さない。
おまえの方が逃げたくなったとしても、どこまでも追いかけて捕まえてやる。
「その覚悟くらい、出来ているんだろうな……?」
呟いて私は、声を上げて笑う。
しばらくそのまま、笑いながら泣き続けていた。
寝台の上に突っ伏して、やがて睡魔に誘われるまで―――。
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