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同じようなことは今まで何度となくされてきて、次第に慣れてもきて、たとえ望んだ行為ではなくても、すればそれなりに気持ちよくなれることはわかっていた。頭と下半身は別モノ、とはよく云ったものだ。その時ばかりは嫌悪の感情など一旦よそに置いておいて、それなりに気持ちがいい行為として受け入れれば、ちゃんとモノは勃つし、射精だって出来る。
しかし、トゥーリとのそれは、今までとは全く違っていた。
気持ちいい、なんてひとことだけでは片付けられない、まさに感情の奔流にでも押し流されてしまうかのような。ただ、溺れてしまえ、とばかりに押し寄せるそれには、決して抗うことなど出来やしない。
恍惚、とは、まさにこういうことを云うのではないだろうか。
はっきりしない意識の中、何も考えることなど出来ないままに、ただ大きすぎる余韻に身体を隅々まで支配されて、しばらくは動くことさえ儘ならなかった。
――どうしよう、もっと欲しい……もっと、この感覚を味わってみたい。
初めてなのに、早々と中毒にすらなりそうだった。
想い合って身体を繋げるということが、その歓びが、こんなにも麻薬のように私を侵してしまうものだとは知らなかった。
『俺は、総督のことが好きです。あなたなしでは、もう生きていけない。――愛してます、心から』
ようやく彼の口から聞くことが出来た、その告白にも舞い上がり、求められるままに何度も身体を繋ぎ、自分からも彼を求めた。一晩中、互いが互いを求め合い、飽きることなく身体を交わし続けた。
――まさか、自分が立てなくなるまでとは思わなかったけれど。
それだけ私が彼に溺れ切っていたという証明、でもあるのだろう。
ぶつけられる激しさに悲鳴を上げている身体のことになんて気にもかけず、つい我を忘れてしまった。
ただ彼に求められることが嬉しくて、自分もただ彼が欲しい一心で、終いには気を失うまで、彼を受け入れては飽くなき快感を貪欲なまでに貪り続けた。
それでも足りないくらいだと思っていたのに……なのに、こんなにも心は満たされている、それだけが不思議で、恥ずかしいくらいにくすぐったい気持ちで一杯だった。
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