【終章】

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       王宮内には、ありったけの衛兵が配置されている。  城壁の外を取り囲むように、ずらりと並ぶユリサナの大軍。  ――血戦の火蓋が切られるのは、もう間もなくだろう。  物見櫓からその様子を眺めていた俺は、やおら踵を返した。  俺には俺で、これからやるべきことがある。 「行くぞ」  短くかけた一声で歩き出したと同時、幾つかの足音が背後に付き従ってくる。  我々の目的――それは玉座の間。  そこでは国王が、数人の側近と重臣たちに囲まれて、落ち付かなさげな様子を隠すこともなく、一段と高い位置に座っていた。 「――どこへ行っていた、アレクセイ!」  扉を開けて入ってきた俺を見るなり、苛立ちに任せて怒鳴り付けてくる。 「仮にも私を護るべき近衛騎士団の長が、この大事に何をしているのだ!」 「申し訳ありません」  そういう貴様は一国の長だろ、少しは落ちつけよ。――とは思うものの、とりあえず頭は下げておく。 「外の様子をうかがっておりました」 「おお、そうであったか……して、様子はどうだ?」 「始まるのは、もう間もなくでしょう」  言った途端に、まさに押し寄せる、というに相応しい音量の鬨の声、そして砲撃音が、建物全体を震わせるようにして、こんな王宮の奥深くにまで響き渡ってきた。  ――始まったか。  それが聞こえてきたと同時、国王をはじめ、そこにいた皆が息を飲んで身を竦める。  この場で普段どおり落ち付き払っているのは、俺と、その背後に立つ部下たち数名のみ、だった。  より一層、平常心を失った王が、まるで怒鳴り散らすように、こちらへ声を投げつけてくる。 「こうしてはいられない! 私はここを出るぞ!」  ――こちらも、また始まった。  もう数日前から、こればかりだ。
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