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「――どういうことだ、アレクセイ……!」
ふいに背後からかけられた声に振り返る。
そこには、アクスとセルマの二人に両脇から剣を突き付けられ、既に玉座の肘掛部分に両腕を拘束されている、身動きすら儘ならない国王陛下の怒りに燃えた瞳があった。
「なぜ私にこんな真似を……!」
「言ったでしょう? 国王であるあなたには、王宮に居ていただかないと困るんですよ」
「貴様、私に何の恨みがあって……!」
「恨み……? あなたは、自分が私に恨まれていないなどと、本気で思っていたとでも……?」
微笑みらしき形に口許を歪ませながら逆に問いかけてやると、そこで王は、ぐっと言葉に詰まったように口を噤んだ。
そのうえで、更に言葉を浴びせかける。
「どうやら心当たりが、腐るほどあるようですね」
悔しそうに唇を噛み締めて視線を背けた、その顎を乱暴に掴み寄せ、無理やり自分の方へと視線を向けた。
「心配しなくても、私は何もしませんよ。これでも近衛騎士ですからね。あなたが国王である限りは、その御身はお護りします」
「アレクセイ……おまえは、一体なにを企んでいる……?」
「別に、私は何も」
そして、どこまでも低い声で告げてやる。
「こちらが何をせずとも、あなたは相応の報いを受けるだろう。ただ黙って待っていればいい。――それは、もう間もなくだ」
王宮の門が破られれば、彼ならば即座に乗り込んでくるだろうと予測していた。
国王のおわす玉座の間に至る回廊には、近衛騎士団勢揃いで配置がなされていたが、彼には手を出さず無傷のままここまで通すよう、予め通達してある。
そう時間を置かずして、やがて彼は姿を現した。
数名の護衛だけを引き連れて、近衛騎士たちが立ち並ぶ中、臆することもなく堂々と歩いてくる。
ここへ至るまでに相当な数の人間を斬り捨ててきたのだろう、護衛は勿論、自らの身体にも大量の返り血を浴びていた。
「――やあ、アレク。久しぶり」
出迎えた俺に、そう気さくな声をかけて。
しかし次の瞬間には、その視線は部屋の奥、玉座へと向けられていた。
つかつかと迷いの無い足取りで、彼はそこへと歩み寄る。
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