娘ばかり可愛がる夫

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結衣と大翔を寝かしつけてから、リビングのソファでビールを飲んでいた拓哉の横に腰をおろした。 「ねぇ、結衣にばっかりおもちゃを買ってくるのやめてくれない。大翔のことも少しは気にかけてよ」 ずっと我慢していた不満を思いきってぶちまけた。 「大翔はおもちゃ沢山持ってるだろう。結衣はまだなにも持ってないんだぞ。おまえこそ、そうやって大翔を甘やかし過ぎなんじゃないのか?」 以前ならなんでもハイハイと聞いてくれていたのに、最近はすぐに反論するようになった。 「結衣と同じように可愛がってって言ってるわけじゃないの。でも大翔はあなたに嫌われてると思ってるのよ。とっても傷ついてるのよ」 「そんな事でいちいち傷ついてなんかいたら、碌な男にはなれないな。過保護もいい加減にしろよ」 「両親に愛されて育つことが一番大切でしょう。甘やかしてるのとは違うわよ」 「生まれたばかりの自分の娘を可愛がるのがそんなに悪いことなのか? 大翔を虐待してるわけでもないのに。大体、将来あいつが大学まで行くための費用だって、毎日汗水たらして働いている俺の稼ぎから出すんだろう。感謝くらいしてくれてもいいんじゃないのか?」 「感謝してないわけじゃないわよ、どうしてそういう話になるの? そういうこと言ってないし」 「おまえの方が結衣に冷たすぎるだろ。俺の子はそんなに可愛くないのかよ!」 「な、なに言ってるの、私はふたりともちゃんと可愛がってるわよ。変なこと言わないで!」 「そうかな? そういう風には見えないな。とにかく俺が結衣を可愛がることにとやかく言われる筋合いはないな。もう寝る」 拓哉は不機嫌にそう言って、寝室へ入っていった。
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