25人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
何を言ったって無駄だ。拓哉は意固地になってしまって、聞く耳を持たない。
今度こそ、今度こそ、ほのぼのとした暖かい家庭を築こうと思っていたのに。
「ふぎゃあ! ふぎゃあ!」
さっき寝かしつけたばかりだというのに、結衣がもう目を覚ました。
いつも眠りが浅く、夜中に何度も目を覚ます。
大翔まで目を覚ましたら大変と思い、慌ててベビーベッドから結衣を抱きあげた。
ソファに座り、おっぱいをあげる。
無心におっぱいを吸う結衣を見つめた。
ーーー可愛くないのだ。
血を分けた自分の子であるのに、少しも可愛くないのだ。
もうずっと以前から気づいていた。
結衣を愛せていない自分に。
その罪悪感と嫌悪感という葛藤が、夫の拓哉に投影されていた。
だから拓哉の行動が許せなかった。
平等にふたりの子を愛せない拓哉に我慢ができなかったのだ。
「結衣、ごめんね。ママ優しくなかったね」
おっぱいを吸っている結衣の白いほっぺに涙がポタリと落ちた。
最初のコメントを投稿しよう!