scene.4

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「そうなんだ? 何か用でも、あった?」 「用、って訳じゃないんだけど、会いたかったから」  抱え直そうとしたファイルが手から擦り抜けて、音を立てて落ちる。  弾みでファイリングが解けて、床一面に紙が舞った。 「あっ、ごめ……」  慌てて屈むと、陽も屈む。  陽があんな事言うから、心臓がドクドクうるさくて、紙を集める手が震えてしまう。 「大分前にもこんな事あったよね? あの時は、もっと盛大だったけど」  陽が小さく笑って、その時の事を思い出して、強張っていた頬が少し緩んだ。 「……うん。そうだね」  入社してすぐぐらい。  わたしは陽と、挨拶以外の会話をここで初めて交わした。
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