scene.5《2》

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「本当にここでいいの?」 「大丈夫です。 片岡さん、ごちそう様でした。すごく美味しかったです」  駅まで送るよ、と言ってくれた片岡さんに、そう言って頭を下げる。  一度目は「でも」と言った片岡さんは、今度は「うん」と頷いた。 「じゃあ、また明日ね? 気をつけて」 「はい。お疲れ様です」  お疲れ様、バイバイ。  そう笑って、片岡さんは人混みに紛れていく。  見えなくなってから、踵を返した。  夜だけど、風がないせいで蒸し暑い。  中途半端に取り過ぎたアルコールは、生温い風じゃ、抜けてくれそうにない。  駅に向かう道を、人を避けながらゆっくりと歩く。
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