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「10年、か……」
10年。
その気の遠くなりそうな年月は、心に重くのしかかった。
わたしだったら、12……小学生の頃から、って事だ。
「無理でしょ。そんなの……」
口の中で呟いた言葉は、周りの喧騒に混ざる事なく消える。
それは、あまりにも長くて、あまりにも深い。
わたしの想いなんて、比べものにならないほどに。
「もぉー、やだぁー」
その声と一緒に肩に衝撃が走って、体がよろけた。
「あっ、すみませーん」
「……いえ。こちらこそすみません」
肩がぶつかった女の子に、頭を下げる。
「ちゃんと前見ろよ。バカ」
女の子にそう言った隣の男の人は、わたしに頭を下げてから、彼女の肩を抱き寄せる。
抱き寄せられた彼女は、えへへ、ごめーん、と彼に可愛い笑顔を見せる。
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