scene.5《2》

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「10年、か……」  10年。  その気の遠くなりそうな年月は、心に重くのしかかった。  わたしだったら、12……小学生の頃から、って事だ。 「無理でしょ。そんなの……」  口の中で呟いた言葉は、周りの喧騒に混ざる事なく消える。  それは、あまりにも長くて、あまりにも深い。  わたしの想いなんて、比べものにならないほどに。 「もぉー、やだぁー」  その声と一緒に肩に衝撃が走って、体がよろけた。 「あっ、すみませーん」 「……いえ。こちらこそすみません」  肩がぶつかった女の子に、頭を下げる。 「ちゃんと前見ろよ。バカ」  女の子にそう言った隣の男の人は、わたしに頭を下げてから、彼女の肩を抱き寄せる。  抱き寄せられた彼女は、えへへ、ごめーん、と彼に可愛い笑顔を見せる。
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