last.scene

11/17
109人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ
「後ろにいるけど」  耳元と、後ろからと、声が二重で聞こえた。 「またそんな濡れて……」  わたしの頭の上には、透明のビニール傘。  時間差でわたしの背中にかけられたのは、ぶかぶかのスーツの上着。  心臓が強く打つ。  服の上からぎゅっと押さえて、ゆっくり振り返った。 「美亜、雨に濡れるの好きなの?」  陽は笑って言ったけど、わたしは泣きそうになった。  まるでドラマみたいな出来事に。  まるであの夜の再現みたいな出来事に、泣きそうになった。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!