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「後ろにいるけど」
耳元と、後ろからと、声が二重で聞こえた。
「またそんな濡れて……」
わたしの頭の上には、透明のビニール傘。
時間差でわたしの背中にかけられたのは、ぶかぶかのスーツの上着。
心臓が強く打つ。
服の上からぎゅっと押さえて、ゆっくり振り返った。
「美亜、雨に濡れるの好きなの?」
陽は笑って言ったけど、わたしは泣きそうになった。
まるでドラマみたいな出来事に。
まるであの夜の再現みたいな出来事に、泣きそうになった。
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