109人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ
「ははっ、ひっでー。そういうのは、本人には言っちゃだめでしょ?」
「片岡さんにだけは言われたくないです」
そう言うと、片岡さんはぴたっと止まる。
お互い顔をじっと見て、どちらかともなく吹き出した。
「片岡さん」
「なに?」
「ありがとうございました」
「なにが?」
「わたし、ちゃんと決着つけられそうです」
片岡さんは一瞬目を見開いて、すぐに表情を和らげる。
「ふーん。そっか。良かったね」
「はい」
「まぁ、やけ酒だったら、何時まででも何日連続でも付き合ってあげるから、きっぱり振られておいで」
腕を組んで意地の悪そうな顔をした片岡さんが言ったのは、はなむけの言葉とは到底思えないひどい言葉。
だけど、わたしには十分過ぎるほどだった。
十分背中を押してもらえた。
最初のコメントを投稿しよう!