第二章 内閣改造

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********************** 「第一党」 日本物理学会に関連する中規模のネタを取引した後、薄汚い中華料理店のカウンターで秋本は呟いた。 物理学科に所属する僕の活躍を称え、時給五十円アップのお祝いに飯を奢ってやるというのでわざわざ大学帰りに十二駅も動いてきたというのに、秋本が指定した店はお化け提灯を下げていた。 夕飯に具の寂しいワンタン麺。 僕はテレビのリモコンを握る高齢男性と盛り上がる秋本を横目に、ウーロンハイを延々と流し込んでいた。 酒が強いというのはしばしば虚しい。 食事中の部下の隣でシケモクに火をつけるボスの呟きを無視すると、横からジョッキを奪われた。 「おいおい、まだ酔っぱらうなよ。機嫌を直せ」 「テスト期間直前に扱き使われたせいで、どれだけ苦労したか秋元さんは分かっていない。奢りならせめて飲ませてくださいよ。僕、強いから」 「いいから、聞けって」 ジョッキの中身を一気に飲み干し、秋本はメンマを噛みながら声を潜めた。 表情は変わらないが、秋本が余程人に聞かれたくない時にしかやらないサインである。 僕もまた、正面を向いたまま渋々聞く準備をする。
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