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「だからな。大事なのは与党第一党なんだよ」
「M党がどうかしましたか」
「先の選挙で久しぶりに第一党がJ党から移っただろ。ということは、俺の今までのオトモダチは?」
「J党のひとが多い、ですよね」
「そう。そしてここ常連の親父こそが、J党の親友と俺とのパイプ役」
振り返りはしないが、そう教えられて僕は睨みつけたばかりの男性に心の中で謝罪した。
そして、余計な情報からとことん僕を遠ざけておくはずの秋本の思惑を汲み取って、深い溜め息を吐いてしまう。
「僕を来させたってことはつまり」
「うん。今回は特大の花火を仕込むぞ。親父にウィンクでもしておけ、お前も大いに巻き込むからな」
恐る恐る振り返ると、サッカー中継を凝視していた親父が先にウィンクを寄越した。
会釈してぎこちなく首を戻すと、秋本は椅子に引っ掛けていたグレーのジャケットを手に立ち上がろうとして、よろめいた。
「よし、じゃあ、これから打ち上げ兼作戦会議だ。旨いところに連れていってやるが、酒は無しな」
ウーロンハイ半分で真っ赤な顔を向ける秋本を支え、僕らは個室のあるレストランへと繰り出した。
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