第二章 内閣改造

7/9
前へ
/21ページ
次へ
「世間話はこれぐらいにして、仕事の話に戻るとな。お前の嫌悪している物忘れの酷い国民性を最大限に利用したいって腹なんだな、俺の親友は。ほら、人の噂も七十五日、ほとぼりもいつかは冷めるって言うし」 「言い換えたって嫌なものは嫌です。それに僕は単純に結果から見た表面的事象を例えただけですからね。みんながみんな忘れていると思ってナメんな」 「まあ、ナメもするんじゃね。親友は第一党時代に築き上げてきた長年の権力を持ってるし、逆らえるやつは事実少ない。右に倣えも国民性だろ」 ぐっと言葉に詰まると、秋本は淡々と続けた。 「依頼内容はな、M党内閣改造直後のタイミングで国民の信頼を失わせてほしい、その為の祭りを用意してくれってこと。テーマは今流行りの」 「不倫?」 「そうそう。前情報で小石集めは充分にしたから、にきやかしの何発かは親父に渡して前金を受け取ってきた。あとは任せるってさ、俺ってば信頼されてるう」 僕は少なからず嫌な気持ちで緑色のテーブルクロスを睨んだ。 このひとお得意の花火大会が始まる。 アルバイトを始めた頃、気になって既刊を拾い読みした前回の花火もなかなかにえげつなかった。 しかも、秋本が書いたのはたったの数本だけ。 あとは有名週刊紙内で推測が乱立し、勝手に収束が遠退いていくのだ。
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加