第二章 内閣改造

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緊張と嫌悪感で黙り込む僕に、秋本は突き放す声色で言った。 「忘れるな、これが俺の生業だよ。それにな、俺は出鱈目を並べているんじゃない。周知でないだけで、俺の扱う不祥事は全て実際に起こったことだ。悪意のでっちあげに走るほどネタには困ってねえ。そこらへんの加減でフリーランスになったくらいだ」 顔を上げた僕は意識的に真っ直ぐ秋本を見つめ、その視線を受けて眉をしかめた彼は早口になり、かつ露悪的に微笑んだ。 「ま、何よりも今回のは金になるぜ。お前の協力が不可欠だからな、ボーナスはしっかり出してやる」 僕と秋本は力強く握手をした。 それから、入店の際こっそり頼んでおいたボトルワインを秋本にたらふく飲ませて潰し、僕自身は明日へ持ち越さないよう適量を飲んできっちりと鬱憤を晴らした。 翌朝、僕は全休だったが秋本には途当然仕事がある。 叩き起こして水を飲ませ、カラオケボックスを午前五時までに出ると、秋本は吐き気と闘いながらも取材地は僕の自宅の最寄り駅付近だと告げた。 千葉県内でも都心へのアクセスが良い街、言い換えれば典型的なベッドタウン。 集合住宅が集まるこの街で取材をするというのは少し意外だった。 僕が住むマンションは駅から徒歩五分の好立地だが、地方公務員の父の給料で手が出る価格だ。
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