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「代わりました。兄貴? もしかして帰省してきたの? どうして・・・・・・」
「こんばんは、ダイチ君」
その一言で、僕は思わず受話器を耳元から離した。
忘れもしない、その声はあの気味の悪い居座り客のものだ。
しかも、大智というのは僕の名前である。
なぜ知っているのかと一度離した受話器をもう一度受話器に当てると、どこか崩れたような雰囲気の乱暴な口調が耳朶を叩いた。
「聞いてんのか、おい。兄貴持ちの西野大智君」
「はい、聞いていますけど。あなた、この前のお客様ですよね? どうしてフルネームを知って、というかもしかして非通知の電話もあなたでしたか?」
「ご名答。俺は秋本涼二という。これからよろしくな」
「急によろしくと言われても意味がわかりません。何の用ですか」
「ここに割りの良いバイトがある。誰にでも出来る仕事じゃない。そこの居酒屋より四百円は高く時給を出すぞ。どう?」
「それはあなたの下で働くということですか」
「うん、部下に欲しい」
「お断りします。大体、何者ですか、あなた。そんな不確かな情報を提示されただけでは、誰も応募なんかしませんよ」
「なら、とりあえず一回喫茶店で会おうぜ。そこの居酒屋はもうやめることになっているから」
「は? 嫌です」
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