都立第一大学広告研究会の陰謀

13/19
前へ
/19ページ
次へ
   その後、田島くんからの連絡は無く学園祭当日を迎えた。  中堅大学であるうちの大学でも、やはり学園祭は盛り上がる。キャンパスや教室では凝った料理の屋台が広がり、占いに仮装、吹奏楽のマーチなど多彩なイベントに胸が踊った。  しかしそれは初日だけで、最終日となる二日目、ミスコンの発表がある当日は学園祭を楽しむ気分は失せていた。  これから体育館で結果発表が行われる。  一体何人の人がいるのか。袖から見る館内は生徒で満席で、私は震えた。結果などどうでもいいので、早く終わらせて帰りたかった。 「それでは、最後に各ファイナリストに最終アピールをしてもらいましょう!」  司会の方がそう言い、ファイナリストが順々に壇上に上がる。  演説は予め話に聞いていたので、事前に用意したカンペで乗り切った。他のファイナリストが身振り手振りでアピールする中、私はただただ全ての工程が終わったことに安堵していた。  そして、ふと思った。このあと、最後に先生方が最後の票を入れ結果発表となる。  PR動画の公開が、無い。  事前にサイトやSNSで配信されるものと思っていたから、田島くんの連絡をずっと待っていた。だがいつまで経っても連絡が来ないので、コンテストの当日に流れるものかと思っていたのだ。  苦労して撮ったあの動画はどこに行ってしまったのだろうか。   ぼんやりとそんなことを考えている間にドラムロールが鳴り、やがてスポットライトが一点に集中する。  グランプリはやはり若菜が選ばれた。  断トツの投票数だ。当然の結果である。  
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

19人が本棚に入れています
本棚に追加