都立第一大学広告研究会の陰謀

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   ……そうだ。  そんなこともあった。すっかり忘れていた。  私はあのとき、クラスメイトが試行錯誤した結果、セリフの無い役を与えられて心底嬉しかったのだ。  嬉しすぎて、ただ消化的に演劇を終えたので、何の記憶も無かった。セリフが無いことが嬉しすぎて、田島くんと手を繋ぐことすら「はい、喜んで」という感じだった。  これから化粧直しをして打ち上げ兼デートに向かうという若菜を引き止め、もうひとつ聞いた。 「ま、待って。嫌な予感がしてきた。ミスコン開催前に、PR動画撮らなかった? 三分のやつ。皆撮ったんだよね?」 「何それ」  事の顛末を話すと、またも爆笑された。 「それ、単に田島がさっちゃんと恋人気分を味わいたかっただけでしょうが。手繋いでイチャイチャして、自分のスマホにそれを収めたかったんじゃない。田島に聞いてみなよ。どうせ企画がボツになったとか言うから」  私は愕然とした。  
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