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「カット! カットカットカットカットカット!」
誰もいない土曜の部活棟の庭先で、田島くんは構えていたスマートフォンの腕を下ろしながら怒号を響き渡らせた。
……一回聞けば分かるから、そう騒がないでください。
そう思ったが、黙っていた。何故ならもうテイク16だったからだ。15回同じ反論をして、私は疲れ切っていた。
私を正面で睨みつけている男、田島春人は激怒していた。必ず、かの傍若無人な大根役者を躾けねばならぬと決意していた。
私は16度目のため息をつき、そばに置いてあったペットボトルの水を飲む。
田島くんは私の態度に、若干キレ気味に台本をパラパラとめくっていた。
「なあ、なんでそんなに棒読みなわけ? ちゃんと台本読んできた? 家で練習してきた? いくらなんでも演技下手過ぎねえ?」
矢継ぎ早に質問され、追加でため息をついた。そんなこと、あんたに言われる筋合いは無い。そもそもこんなこと、やりたくてやってるわけでもない。
そう、すべては成り行きだった。
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