都立第一大学広告研究会の陰謀

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   ……なんてことだ。  今日までの、私の苦労は何だったのだ。  地味に家で台本読みを繰り返し、構内で恥を晒し、私の人生に泥を塗った。  キャンパスの大時計がコチリと鳴り、十八時半を示した。私のイライラは、頂点に達する。  ……これは。  これは、文句のひとつも行ってやらないと気が済まない。 「文句のひとつも言ってやらないとねえ」  若菜は私の心を読み取ったように呟くと、ぐいと腕を引き歩き出した。 「ちょっと、どこ行くの?」 「トイレ。まだ時間あるから、化粧直してあげる。焼肉食べても落ちない口紅持ってるし」 「いやいや、いいから!」  ……ああ、でも。  若菜の技術なら、私もちょっとはかわいいオンナノコになれるだろうか?  一瞬変な思考に陥ったことにはっとして、私は大きく首を振る。  まさか、まさか。そんなはずはない。  私は引きずられるように、若菜の後をついていった。  
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