499人が本棚に入れています
本棚に追加
/35ページ
「響さん。」
「何だ?」
「わざとですよね。」
「さぁな。」
「……。」
……嘘つき!!
私は響さんのケーキをじっと睨んだ。
……宿敵め…。
「椿。」
「……。」
「抹茶嫌いか?」
「嫌いです!」
前に一度響さんと食べ物の好き嫌いの話をした時、私は騙された。
響さんは抹茶がダメだと言ったから、私に嫌いな卵の黄身を食べさせた仕返しとして、抹茶のチョコレートを食べさせた。
しかし、響さんは抹茶のチョコレートを平気で食べ、しかも割と好きだと言った。
……響さんにはどうやったら仕返しが…。
「響さん。」
「何だ?」
「嫌いな食べ物は何ですか?」
「卵の黄身。」
「……。」
「拗ねるなよ。」
「拗ねてません。」
……いじわる…。
抹茶のケーキに代わって響さんを睨む。
けど響さんは笑うだけで何とも思っていないようだった。
……ケーキ食べて落ち着こう!
「ケーキ頂きます。」
「ああ。」
立てられているロールケーキの苺をお皿によけ、横に倒す。
フォークで一口分切り、口に入れると苺の酸味と甘味が口いっぱいに広がる。
……やっぱり苺美味しいな…。
苺系はハズレがない。
そう思っていると、
「お前苺好きだな。」
「へ?」
響さんの突然の言葉に驚いていると、響さんが私のロールケーキに手を伸ばした。
「あっ…。」
「…上手いな。」
響さんは頬杖をつきながらそう言って、再びロールケーキに手を伸ばす。
「だ、ダメです!私の分がなくなっちゃいます!」
「俺のを食べろ。」
「敵は食べません!」
「食べ物が敵なのか…。」
そんなことをしていると、
「お姉ちゃん!」
「へ?」
声がした方を見ると、そこには桃ちゃんがいた。
「桃ちゃん。」
「お姉ちゃんとお兄ちゃんは恋人なの?」
「違う。夫婦だ。」
桃ちゃんの問いに即座に反応した響さんは、私が油断した隙にロールケーキを食べていた。
……やられた…。
「お姉ちゃんはお姫様だから…お兄ちゃんは王子様?」
「そうなるな。」
「お兄ちゃんはお姉ちゃん好き?」
「ああ。大好きだ。」
「っ!!」
顔に一瞬にして熱が溜まる。
そんな私はお構い無しに、桃ちゃんは更に質問をしようとしている。
「じゃあね~。」
「も、桃ちゃんこれ以上はお姉ちゃん死んじゃう…。」
……純粋な子供ってなんて恐ろしいの…。
最初のコメントを投稿しよう!