二人とお出掛け

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「二人共美人ですからね。」 ……美人って大変なんだなぁ…。 そんなことを思っていると、つくしさんが鏡を差し出した。 「?」 「椿、一回顔見た方がいいって。」 「え?」 「椿はもっと自信持ちなよ。」 そう言いながら佳奈さんが背中を押し、つくしさんは鏡を見つめていた。 少し歩いて、おそらく注文する所の列に並んだ。 その間にも絶え間なく視線が送られ、私は思わず佳奈さんの腕に抱きついた。 「椿!何で佳奈なの?!」 つくしさんが目を見開いてじっと私を見つめる。 佳奈さんはそんなつくしさんに、慣れてるのか特に反応しない。 「えっと…。」 「えっと?」 つくしさんからの圧力に倒れそうになっていると、佳奈さんが助け舟を出してくれた。 「メニュー先に決めちゃえば?私持ってくから席取っといてよ。」 「わ、わかりました!」 「椿メニューわかってる?」 「う…。」 ……一つも知らない…。 どうするか考えていると、佳奈さんがスマホでメニューを調べてくれた。 「はい。」 「ありがとうございます。」 ……やっぱり佳奈さんってお姉さんみたいだなぁ…。 「どうしたの?」 「はっ…何でもないです…。」 ……いかんいかん…。 私は画面に映し出されているメニュー表に目を落とした。 「…どれが…どう…。」 「…ごめん…わかるも何もの問題だったわ…。」 佳奈さんが私の背中を叩き、地味に慰めてくれた。 すると今度はつくしさんがメニュー表に目を落とし、呪文のようにメニューを唱えた。 「チーズバーガーセットと単品でチーズバーガーとテリヤキバーガーとナゲットとポテトのLサイズとアップルパイでよろしく。」 「ん。」 ……慣れてる…。 思わず尊敬の眼差しでつくしさんを見つめると、佳奈さんが私の肩を叩いた。 「椿も無難にチーズバーガーセットでいい?」 「あ、はい。」 「じゃあ椿、席取りに行こう。」 つくしさんに腕を引かれ、列から外れる。 「お、お願いします!」 なんとか佳奈さんに伝えると、佳奈さんは手を振ってくれた。 つくしさんに腕を引かれて、半ば連行されるかのように店内を歩き回る。 ……混んでる。 席はどこも埋まっていて、なかなか空いている所が見つからない。 けれど私は ……ファストフード店っていつもこんな感じなのかな…。 結構この状況を楽しんでいた。
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