scene.1

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 部屋に入って、大きく息を吐いた。  部屋のほとんどを占めるベッドに、体を投げ出す。 「早く、家出てーなぁ……」  一つ上の兄の広斗が先に入っていた高校は、都内の中でもサッカー部が強く、偏差値もそこそこあって、家からも電車でふた駅。  当然のように、そこに決めた。  もしあの頃の俺に会えるなら、「そこには行くな」と言うと思う。  楽しそうに話していた彼女の声が、頭の中で何回も繰り返される。  部活が一緒で、その時の記憶の大半を占める彼女。  彼氏の弟の俺を、本当の弟みたいにいつも気にかけてくれていた彼女。  心配の色を帯びた彼女の声。  俺の胸を容赦なく抉(えぐ)る彼女の言葉。  それは、無意識であればあるほど、痛い。
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