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「ただいま」
目に入ってきたもので、中に進める足を止めた。
乱雑に置かれたスニーカーに紛れて、きちんと並べられた、ピンクベージュの華奢なミュール。
男二人兄弟で、もう50近い母親も履くはずのない靴。
「陽おせーよ」
「陽君おかえりー」
その声に目線を上げると、リビングのドアから、声と同じ二人分の顔が覗いていた。
なんでいんの。こんな時間に。
……こんなことなら、佐藤さんの誘いに乗っとけば良かった。
「円香さん、いらっしゃい」
廊下を進みながら言った俺に、円香さんはふわりと笑った。
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