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部屋に入って、大きく息を吐いた。
部屋のほとんどを占めるベッドに、体を投げ出す。
「早く、家出てーなぁ……」
一つ上の兄の広斗が先に入っていた高校は、都内の中でもサッカー部が強く、偏差値もそこそこあって、家からも電車でふた駅。
当然のように、そこに決めた。
もしあの頃の俺に会えるなら、「そこには行くな」と言うと思う。
楽しそうに話していた彼女の声が、頭の中で何回も繰り返される。
部活が一緒で、その時の記憶の大半を占める彼女。
彼氏の弟の俺を、本当の弟みたいにいつも気にかけてくれていた彼女。
心配の色を帯びた彼女の声。
俺の胸を容赦なく抉(えぐ)る彼女の言葉。
それは、無意識であればあるほど、痛い。
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