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ちらつく顔を頭から追い出したくて、足早に歩く。
エレベーターを待ちながら、大きく息を吐いた。
……やっぱ、ちょっと似てるわ。
普段はそう思わないけど、ほんの一瞬。
いつも澄ました顔ばかりしている佐々木さん。
彼女を初めて見た時も、目を奪われた。
彼女の見せた、緊張しているのか無理矢理作ったみたいなガチガチの笑顔が、記憶の中のカノジョに少し似ていた気がしたから。
必死で忘れようとしているものを、簡単に蘇らせる彼女。
やっぱり、関わらない方がいい。
エレベーターに乗り込みながら、少し持ち始めてしまっていた、彼女への興味を奥へと押し込む。
彼女には、関わらない。
そう決めた。
そう決めていたのに、あの雨の日に、それは崩れた。
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