scene.2

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「高瀬さん」  得意先に向かおうと席を立ったところで、名前を呼ばれた。  振り返ると、1メートル先にいる彼女は、一歩俺に近付いて、クリアファイルを差し出した。 「これ、頼まれてた書類です」 「あ、ありがと」 「いえ」  彼女は小さく頭を下げて、踵を返す。  その時、胸くらいまである茶色の長い髪が揺れて、花みたいな匂いが微かに鼻を掠めた。  彼女の名前は、佐々木美亜。  今年の4月に、事務として入ってきた新入社員の一人。 “高嶺の花”。  彼女のことをそう呼んでいたのは、誰だったか。  人形みたいに整った顔。  女子社員の間で、可愛いと評判の制服が包んでいるのは、すらっとした華奢な身体。
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