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声
私が幼児だった頃の話
祖父が亡くなった後、祖母は私がよく仏間で遊んでいる時に誰かと喋っている姿を家事の合間に目撃する事が度々あったそうな。
私は見上げるように見えない誰かと話をしていてその相手を「お爺ちゃん」と呼んでいた。
それを見た祖母は、ああ今ここにあの人の霊が来ていて孫と会話したくて頻繁に帰って来ているんだと思ったそうだ。
どんな会話をしたのか、どんな姿をしているのか、親族は私が会話している相手が祖父である事を確認するような質問ばかり投げかけた。
「白髪で」
「うん」
「着物を着ていて」
「うん」
「男の人で」
「うん」
「お爺ちゃん」
「そうか…」
「茶色の着物を着て同じ色の羽織を着てる」
そう言った時、茶色の着物なんて着ていたっけ?
と伯母が言うともう1人の伯母が、あ、と呟いた。
それ以来誰も私に祖父の霊の姿を尋ねなくなった。
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