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僕はその話を聞いて鬼を思い浮かべた。
人間の中に紛れて、人を喰う鬼だ。
鬼は襲う人間の心を考えない、人間と心を通わせない。
爬虫類に似た鬼の目には一切の感情が感じられず、純然たる脅威のイメージが瞳の端を掠めた。
鬼の口は大きく裂けていて、間からは常に呪詛が流れ出している。僕の思い浮かべた鬼は常に誰かを攻撃せずにはいられない存在だった。
そんな鬼に喰われないためには、鬼が自分の領域に入り込めないように心のドアを閉めるかドア自体を小さくするしかないだろう。
或いはもしかしたら、鬼を退治するなんて言う選択肢もあるのかもしれないが、普通の人間にそれは難しい。
先輩は小さなドアを選んだ、誰に対しても。
鬼の付け入る隙を無くすために。
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